Azki Laboratory あずきラボ Azki Laboratory
Equine Conformation & Gait · Feature Atlas

馬体特徴量アトラス

本システムは、募集馬などの動画から、AIが自動で立位・歩様(左右)のフレームを判別し、そこから競走馬の コンフォメーション(馬体構成)と歩様の定量特徴を抽出する。DeepLabCutベースの姿勢推定で関節点を検出し、 球節や骨格の要点には教師データ(正解ラベル)による追加学習を施したうえで、静的・動的な特徴量を算出する。 撮影条件や個体差に対し、現時点で約8割の指標が汎化する水準に到達した。

入口 動画1本 → 特徴量
認識 立位・歩様LRを自動判別
土台 DeepLabCutベースの姿勢推定
学習 球節・骨格を教師データで追加学習
到達点 約8割の指標が汎化
更新 2026-08-17
静的 / STATIC

静止した1枚に宿る骨格の構成(コンフォメーション)。体長・背長・肩角・繋角・管長など。1つの代表値で表す。

動的 / DYNAMIC

歩様周期に宿る運動の質。特徴の本体は単一値でなく周期変動(可動域・沈み込み・連動性)。真横(profile)歩様のみで算出する。

NEW

追加検討した特徴量

今回の更新(2026-08-17)で追加・刷新した特徴のまとめ。繋の角度は歩様ベースの測定へ刷新し、 これまで扱ってこなかった正面(toward)・後方(away)の歩様から、脚のつき方(肢勢)と体幹の安定性を測る5特徴を新設した。 各特徴の定義・集計の詳細は矢印の節を参照。

特徴内容
歩様繋角・内角/棒の回転(前/後) ★ fore·hind_gait_inner/rod_angle繋角の測定を歩様ベースへ刷新。左右どちら向きの歩様でも同じ物理になるよう測る。再現性は全特徴の中でも最高クラス。→ §03
立位繋角(前/後)立位で測る荷重時の繋の固有角(参考値)。歩様の繋角とは別の量。→ §02
X脚/O脚(前肢アライメント) xo_ratio正面歩様での前肢上部のアライメント。大=膝が外(O脚寄り)/小=内(X脚寄り)。→ §05
下部アライメント比下部(蹄まわり)のアライメント=狭踏/広踏。上のX脚/O脚とはほぼ独立の2階建て→ §05
体幹の左右揺れ trunk_sway歩様の周波数帯だけに絞った体幹動揺の振幅。複数の募集年度・クラブで再現性を確認。→ §05
左右リズムのシンクロ step_sync左右の脚リズムの位相ロック。ずれが大きい個体は映像でも「ふらつき」として見える。→ §05
飛節の着地ブレ wobble_pct後方歩様で接地直後に飛節が左右へ動く量。集団内の異常検知フラグ。→ §05
01

測定点と特徴の地図

側面の参照イラストに、測定点(●)と主要特徴の測り方を重ねた地図。 静的=馬体構成/ 動的=歩様の運動。★は本命特徴。(イラストは代表的な鹿毛の立位を模式化)

★肩角 shoulder_angle 前肢の沈み込み fore_sink_depth 駆動角の可動域 drive_ROM ★駆動角 drive_angle 飛節角 hock_angle ★繋角 hind_pastern_angle 体長 overall_body_len 首の対地角 neck_angle_ground ★前肢の振り子 forelimb_swing 後肢の沈み込み hind_sink_depth ★バネ感(反発・弾み) spring_rebound / bounce 連動性(全身の連動) movement_coordination_index 接地周期の規則性 stride_regularity(メトロノーム) L R 左右差(後肢) gait/asymmetry 腹中央 躯長 長躯背短比 body_back_ratio 躯短(肘↔膝) body_back_ratio_short 首ポンプ neck_angle_ROM 尾端 仙腰接合(Hip) 坐骨端(Ischium) 頭頂 キ甲 背中央 尾根 肩端 後膝
02

静的コンフォメーション

馬体の骨格構成。寸法系(体長・背長・繋長・管長)は真横歩様(profile)から集計した。四肢の角度は歩様ベース(§03)を主とし、 立位は参考値とする(荷重時の固有角と歩様中の周期角を別の量として測る)。値は中央値。おおよそ汎化することが確認できた。

特徴意味
体長 overall_body_len鼻端→尾根(tail_base)の全長を体高で正規化した体長プロキシ。
背長 topline_lenキ甲(withers)→尻の背長(topline)。
長躯背短比・躯長 body_back_ratio躯長(肩端→尾端のトランク長)÷背長。躯長は独自指標。値が大きいほど長躯短背。
長躯背短比・躯短 body_back_ratio_short躯短(肘→膝=腹側の長さ)÷背長。古典的な長躯短背の指標
肩角 ★ shoulder_angle肩関節角 angle(キ甲, 肩端, 肘)。識別比が高く、肩の起きの主指標。
飛節角 hock_angle膝–飛節(hock)–球節の3点角。歩様集計で検証中。
立位繋角(前/後)立位で測る荷重時の繋の固有角(参考値)。歩様の繋角(§03)とは別の量。
繋長(前/後) fore·hind_pastern_len繋の長さ(正規化)。
管長ほか hind_cannon ほか管(cannon)長・前腕比・前後比。
03

動的バイオメカニクス(球節・歩様全体)

接地〜蹴り出しの球節のバネ感。位置pxでなく信号の時間的信頼性が肝で、蹄アンカーからストライド周期を推定し、 位相フォールドの説明分散比(EVR)で非周期区間を棄却する周期性ゲートを掛けた。全身の連動性・接地周期の規則性(メトロノーム度)・左右差など、角度でない歩様の質も扱う。 球節の沈み込みや左右差など基幹は汎化を確認したが、一部の指標は現在も精度向上に挑戦中である。

特徴意味
沈み込み深さ(前/後) fore·hind_sink_depth_norm接地相の球節最大屈曲による沈下量(脚長比)。周期性ゲートで非周期区間を棄却して集計。
最大屈曲時の繋角(前/後) fore·hind_max_flexion_pastern_angle球節が最も屈曲した瞬間の繋角。
歩様繋角・内角(前/後) ★ fore·hind_gait_inner_angle歩様中の繋角。左右どちら向きの歩様でも同じ物理になるよう測る。再現性は全特徴の中でも最も高い部類。
歩様繋角・棒の回転(前/後) ★ fore·hind_gait_rod_angle歩様中の繋の傾き。左右向きの違いは補正して同じ物理に揃える。
反発比(前/後) ★ fore·hind_spring_rebound_ratio戻り速度/沈下速度。>1で沈むより速く弾き返す=バネの鋭さ。本命のバネ感指標。
弾み効率(前/後) fore·hind_spring_bounce_efficiency体幹上下動/脚のたわみ量。
反発の一貫性(前/後) fore·hind_spring_rebound_consistency反発のサイクル間安定性。
全身の連動性 movement_coordination_index各動的信号の位相相関(0–1)。
接地周期の規則性 stride_regularityケイデンスの規則性(メトロノーム度、0–1)。
左右差(後肢) gait/asymmetry後肢の左右差。左右を同時に均等に観察できる箇所を重視し、真横(左右)歩様では near/off 側を入れ替えて検算するフリップ検証を行い、見かけの非対称を排して算出した。
04

動的な角度(歩様)

歩様周期でリズミカルに変わる関節角。真横区間の近い側/遠い側の扱いには注意を要し、カメラ画角(パン・距離)を考慮して様々に検討した。近側のみで算出した。

特徴意味
後躯の駆動角 ★ hindquarter_drive_angle_min/max/ROM駆動角(仙腰接合–坐骨端–膝の3点角)を代理点で測る。屈曲端/伸展端/可動域。GT検証で真の駆動角と高い相関を得た。
飛節の開き hind_opening_deg尾根→飛節ベクトルの protraction/retraction の絶対開き角。
前肢の開き(蹄のリーチ) fore_opening_degキ甲→前肢蹄ベクトルの同上開き角(蹄のリーチ)。
前肢の振り子 ★ forelimb_swing_ROM_degキ甲→肘の鉛直角スイングの振れ幅。肘は長ベクトルで頑健。前肢ダイナミクスの本命。
首の対地角の変動(首ポンプ) neck_angle_ROM_deg歩様周期での首の対地角の変動(head-nod)。
肩のスイング shoulder_swing_ROM_degキ甲→肩端の鉛直角スイング。肩のダイナミクス・連動性の指標。
120°140°160°180°1ストライド(1周期 ≈ 66フレーム)前肢の関節角(生検知)— 歩様1周期でリズミカルに開閉関節角(°)フレーム(時間) →
周期的指標の生検知の例(G1馬の1区間)。動画から取り出した前肢の関節角は、歩様のたびに規則的に開閉する。 この周期性そのものが特徴であり、周期に乗らない区間は信頼度ゲートで除外して集計する。
05

前額面の歩様(正面・後方から)

正面(toward)・後方(away)の歩様から測るアライメントとリズム。真横だけでは見えない脚のつき方(肢勢)と体幹の安定性を扱う。 各動画の該当区間はAIが自動で特定し、ショット切替や顔アップの混入を個体ごとに検品してから集計する。

特徴意味
X脚/O脚(前肢アライメント) xo_ratio正面歩様で測る前肢上部のアライメント。大=膝が外(O脚寄り)/小=内(X脚寄り)。毛色や撮影距離に依存しないことを確認済み。
下部アライメント比下部(蹄まわり)のアライメント(前=正面/後=後方)。小=狭踏寄り/大=広踏寄り。上のX脚/O脚とはほぼ独立で、前肢アライメントを上下2階建てで捉える。
体幹の左右揺れ trunk_sway常歩の体幹は左右の荷重交代で1ストライドに1往復揺れる。その振幅を歩様の周波数帯だけ取り出して測る(蛇行や検出ノイズは帯域で除外)。複数の募集年度・クラブで再現性を確認。
左右リズムのシンクロ step_sync左右の脚リズムの位相ロック。ずれが大きい個体は映像でも「ふらつき」として見える。
飛節の着地ブレ wobble_pct後方歩様で接地直後に飛節が左右へ動く量。集団内の異常検知フラグとして使う。
06

代表個体の実測値

対照的な2個体(未勝利馬・G1馬)の信頼性の高い実測値(中央値)。金色 ★ = G1馬で顕著に異なる特徴(相対差15%以上)。
例えばこの2頭を比較すると、G1馬は 長躯背短比(躯長)が小さめ、後肢の繋がわずかに寝て、前肢の沈み込みが小さく振り子も小さめな一方、肩のスイングは大きい—といった特徴がありそうに見える (どの動きが強みで/弱みか、複数指標の相互作用の検出も可能)。ただしこれは n=2 の例示にすぎず、頭数を増やして統計学的に検証する必要がある(今後の重要課題)。
考察:この例ではG1馬の長躯背短比はむしろ小さく、古典的な「長躯背短が良い」という既存概念は競走馬では少し違う可能性がある。 また後肢の繋(つなぎ)が寝ている点は芝のG1馬に見られる特徴で、ダート馬では異なるかもしれない。いずれも現時点では仮説で、頭数を増やした検証が要る。

特徴 未勝利馬 G1馬 ★
主体長=背0.7700.917
長躯背短比・躯長2.181.75
長躯背短比・躯短0.960.85
肩角°83.582.2
前 歩様繋角・棒の回転°81.879.7
後 歩様繋角・棒の回転°73.772.4
後管長0.2700.296
後肢スイング角°39.741.0
前肢スイング角°54.656.9
飛節の屈伸ROM°24.722.0
歩調 Hz0.900.91
駆動角 可動域°30.932.1
前肢の沈み込み0.1960.111
前肢の振り子°21.817.6
肩のスイング°13.215.5
07

今後の展望

この抽出基盤を土台に、目指す先を示す。随時、アイデアや牧場関係の方からのご意見・馬データは絶賛募集中。

展望内容
大規模データでの特徴量抽出多数の馬・多様な撮影条件の画像/動画から特徴量を大量に自動取得し、母集団を大きく広げる。
「走る馬」の歩様シグネチャ検証大量の個体で、競走能力に結びつく歩様・馬体構成の特徴が本当に存在するのかを統計的に検証する。
総合バイオメカニクススコアの算出個々の特徴を統合し、1頭を一目で捉える総合バイオメカニクススコアとして算出する。
毛色診断との統合毛色・馬体診断のAIと統合し、体構成 × 毛色 × 動きを一体で評価する。
静止画・多視点への拡張1枚の写真や複数アングルからの推定に拡張し、現場での即時活用へ。